そもそも整数問題とは??
さて大学入試で多くの受験生を悩ませる整数問題についてです。整数問題は実は非常にはっきりとした方針を立てることができ、本質的理解をしっかりとすれば東大や京大や東工大や一橋などをはじめとするどんな最難関大学の問題も解けるようになります。ではそのためにまず「整数問題」とは何かを押さえましょう。
以下の問題を考えます。
【問題1】$2x^2-x-1=0$ を解け。ただし $x$ は整数とする。
さて、これは整数問題でしょうか。これは2次式を因数分解して
$(x-1)(2x+1)=0$
となって
$\displaystyle x=1,-\frac{1}{2}$ となり、$x$ は整数なので $x=1$ です。
確かに整数の条件を使っていますが、大学入試においてこれは「整数問題」とは言いません。この問題は「整数という条件があるだけの問題」です。
ではここで次の問題を見てみます。
【問題2】$xy-2x-y=0$ を解け。ただし $x,y$ は整数とする。
さてこれは整数問題でしょうか。何故そう解くのかは別記事で解説しますので、ちょっとこれを解いてみたいと思います。右辺を強引に括弧の掛け算の形を作って余分な数を調整すれば
$(x-1)(y-2)-2=0$
となります。$2$ を移行して
$(x-1)(y-2)=2$
で、$x,y$ は整数なので $x-1$ と $y-2$ も整数ですから
$(x-1,y-2)=(1,2),(2,1),(-1,-2),(-2,-1)$ となります。よって
$(x,y)=(2,4),(3,3),(0,0),(-1,1)$
と答えが出ます。
さて、結論ですがこれは整数問題です。
【問題1】と【問題2】にはどのような違いがあるでしょうか。これが最も重要です。
【問題1】で行った変形で出た $\displaystyle x=1,-\frac{1}{2}$ がありますが、ここまでは実は「整数でなくても言えること」です。つまりこの問題は別に「整数という制約があるからこそ解けるという問題ではなく」、「ただの条件として整数があるだけ」です。
例えば【問題1】は条件が「 $x$ は整数」でなくても「 $x>0$ 」などとしても同じ答えになり、「整数だからこその制約が効いていません」。
それに対して【問題2】は $(x-1)(y-2)=2$ までは整数でなくても式変形が出来ますが、その後の $(x-1,y-2)=(1,2),(2,1),(-1,-2),(-2,-1)$ は「整数の制約があるからこそできること」です。整数じゃなくてもいいなら組み合わせは $\displaystyle (x-1,y-2)=(4,\frac{1}{2})$ なども成立しますし、答えは無限にありますよね。
ということでまとめになりますが、「整数問題」とは何かというと「整数特有の性質・制約があるからこそ解ける問題」、逆に言えば「整数特有の性質」を使うことなく問題がある程度解けていくならそれは整数問題ではありません。そうすると次に大事になるのは「整数問題」を解くためには「整数特有の性質とは何か?」が重要になりますが、これはこの先に解説をします。
整数問題は大学入試によく出る??
さてここまでで整数問題とは何かを学習しましたが、この整数問題は入試では超頻出です。特に最難関系の大学では毎年出るといっても過言ではないほど、出ます。理由としては問題バリエーションが本当に多く、数値替えではないレベルで本当に多種多様な問題が作れるというところが大きいでしょう。
ただ問題のバリエーションはパターン化できないほどありますが、共通して言えることは「整数特有の性質を押さえた変形」をすることなので、方針や論理的な筋道は非常に明確に立てることができ、「整数の性質さえ押さえていれば的外れにはほぼならない」ため教科書や問題集に載っていない別解も多数作れます。
整数問題を解くための整数特有の4つの性質って何??
ということで、ここで整数問題を解くために重要な「整数特有の性質」を教えましょう。基本的にこれから紹介する4つの性質でほぼ全ての整数問題が解けます。
数学オリンピックの問題など超ハイレベルな問題でこの4つの性質で解けない場合は「4つの性質から派生する性質」を用いた問題になることがほとんどのため、やはり次の「4つの性質」が問題を解くことに重要なことは間違いありません。
ちなみに大学入試というところに限れば東大や京大も含め、この4つの性質で99%くらいは解けます(1%を残しているのは数学オリンピックレベルのほぼ全員が解けない問題が出題された事例や今後の可能性を踏まえてそう書いていますので体感的には100%と言っても良いくらいです)。
前置きが長くなりましたが、整数特有の4つの性質についてです。これは話の流れから当然「整数だからこそ言える概念や用語や考え方」になります。それが次の4つになります。
(1)約数・倍数
(2)余り
(3)有限区間に有限個
(4)小数にならない
です。
これら1つ1つの詳しい話は別記事にて解説をしていますので、そちらをご覧ください(別記事で書きますがこれらは暗記するというより考えれば当たり前のことです)。
参考) 整数問題を解くための考え方その1~約数と倍数~
参考) 整数問題を解くための考え方その2~余り~
参考) 整数問題を解くための考え方その3~有限区間に有限個~
参考) 整数問題を解くための考え方その4~小数にならない~
ちなみに(4)については実は(1)~(3)に内包することも出来なくはないですが、問題を解くときに独立させた方が簡単に考えやすいときがあるので独立させています。なので塾・予備校の有名講師の先生などで「整数の性質3つ」という場合がありますが、それは(4)を除いているというわけです。
1つ1つの性質を解説した別記事では、1つの問題をこれら4つの性質を使って4つの別解を紹介しています。逆に言えば1つの問題でも「整数の性質」さえしっかりと使えば割とどのような解き方でも答えに辿り着くため、解法が複数存在することがかなり多いのも整数問題の特徴です。
整数問題は考え方を押さえれば面白いし何でも解ける!
ここまでで「整数問題とはどのような問題なのか」ということと、それを解くために必要な「整数特有の4つの性質」を解説しました。実際にその性質を使った解法は別記事を御覧下さい。
これで分かるように「整数問題」は非常に論理的な方針立てが可能で、「整数特有の性質」さえ外していなければかなり多くの別解が存在するため、解法の自由度も非常に高く面白いです。本来数学は整数問題に限らず「本質的理解」さえ出来ていれば自由にその人の考え方で解くことができます。皆さんもまずは「整数問題」をきっかけに「数学の面白さ」を是非楽しんでください。
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