数学全般

整数問題を解くための考え方その2~余り~

整数問題を解くために必要な余りって何??

さて、この回では前の記事にあるように整数特有の性質を使った具体的な問題への応用の仕方について触れていきます。これら一連記事を読めばどんな整数問題にも対応できる考え方を獲得できます!

前の記事が前提になっているのでまだ読んでいない方はまず以下の記事をご覧ください。
参考) 整数問題の解き方は??どんな整数問題も解ける重要な考え方は4つ!
参考) 整数問題を解くための考え方その1~約数と倍数~

今回のテーマは整数特有の4つの性質のうちの1つの余りについて扱います。余りは約数倍数などと同様で小学校のときに習う用語のため聞き馴染みのある言葉ではないでしょうか。

数学では $a$ を整数、$b$ を自然数としたとき、
$a=bq+r$
をみたす整数 $q$ と0以上 $b$ 未満の整数 $r$ は1つに決まり、$q$ を商、$r$ を余りと定義しています( $a$ を $b$ で割るということを式にしたものです)。

その他余りに関連する重要な考え方としては合同式 ( $mod$ ) などがありますね。余りという用語も整数と関係ないように思えますが余りは整数でしか定義していない整数特有の性質です。

例えば、$7$ を $2$ で割ったときのことを考えます。
$7=3.5\times 2$ だから $7$ は $2$ で割り切れるというようには言いません。

それだと何で出来てしまいますね。実数の範囲ではそのような見方もできなくはないですが、整数では整数の範囲で解決できないとき余りという概念を考えます。

例えば上記の場合は整数では $7$ は $2$ で割り切れませんが、$7=2\times 3+1$ に考えて、商が $3$ で余りが $1$ というように余りの概念を導入して議論を進展させます。

以上のことから余りという用語や概念は整数の分野で定義することができる整数特有の性質になります。整数特有の性質なわけですから当然整数問題を解くためにこれを使うということは約数倍数などと同様で論理的に当然なことになります。

整数問題を解くために余りを使った式変形や考え方をするには?

問題の中で余りの性質を使おうとするときにすることは単純です。例えば、余りの定義から $a=bq+r$ の形にすればいいですし、余りだけに着目したければ $mod$ などを使えばいいでしょう。

細かい話はさておきそのようなことをすれば、概ね整数特有の性質である余りに結びつけることができ、論理的なアプローチがとれます。そのため、余りの性質を整数問題の中に使いたい場合は $a=bq+r$ の形を作り出したり、$mod$ を考えることに意味があります。

実際に整数問題を余りの考え方で解いてみよう!

ここで以下の問題を考えてみましょう。
【問題】$x,y$ は0以上の整数として、$xy-2x-y-2=0$ を解け。
整数問題の一連記事ではこの1つの問題を整数特有の4つの性質を使い4つの別解を出しています。もちろん今回は4つの性質のうちの1つの余りです。

ちなみにはじめに1点注意ですが本来この問題は、余りの性質とは相性が悪く解きにくいです。そのため、教科書などで紹介もされていない解き方ですし、参考記事の約数倍数の性質などの方が簡単に解けます。

それにも関わらず何故そのような解き方を試みるかと言うと「整数問題」というものが「整数特有の性質」で解けるというところを強調したいためです。もちろんその整数問題が問題構造上、整数特有の性質のどれかでしか解けないなどの可能性はありますが、これはやってみてはじめて分かることです。

では問題を解きましょう。余りの性質を使うには
$a=bq+r$
の形を作りたかったので、まず強引にその形をのように作ってみます。

例えば最初の式 $xy-2x-y-2=0$ を移項して形を無理矢理作ると
$y=x(y-2)-2$
と変形できます。これは $a=bq+r$ の形を作りさえすれば、これ以外の変形でも良いです。

次に $y=x(y-2)-2$ で余りの形が作れたので $mod$ を使って
$y+2\equiv 0(mod~~ y-2)$
と表記してみます。割る数の $y-2$ は定義で正の必要があるため(また1で割るというのも特殊なため)、$y=0,1,2,3$ はあとで具体的に調べるとして $y\geqq4$ で考えます。

$y=4,5,6$ まで入れてみると成立するのは $y=4,6$ のみということが分かり、また $y+2$ と $y-2$ は数を大きくするとどんどんと近づいていくため、$y\geqq 7$ 以上では成立しません。

あとは、先ほど保留にした $y=0,1,2,3$ については元の式の $xy-2x-y-2=0$ に入れて確かめれば最終的な $y$ は$y=3,4,6$ と決まります。

$y$ が決まれば $x$ も決まり、
答えが $(x,y)=(2,6),(3,4),(5,3)$ と求まります。

見て分かるようにこの解法は「 $y\geqq 7$ 以上で成立しない記述を本来はしっかりとしないといけない点」や「最初のところの式変形などの基礎力」など数学の扱いが約数倍数などよりも色々ありやや難易度が高くなっていることが分かります。これは問題構造上、余りという整数特有の性質と相性があまり良くないためです。

ここで重要なことは約数倍数などと同様で整数問題における変形はかなり強引でも意味があるという点です。最初に行ったの変形は整数問題ではない実数の範囲の問題では意味不明な変形ですし、むしろやっても何の意味もなく良くないというレベルの式変形です。

つまり数学の式変形は整数問題に限らず解く問題や考え方によって正しいものであったり間違ったものになったりします。整数問題の変形は整数問題以外では意味のない変形も多いので注意しましょう。逆に整数問題において余りの性質を使いたい場合は $a=bq+r$ の形を作ったり、$mod$ を使うことが最も重要な変形になります。

整数問題を解くための余りの考え方のまとめ

さて余りの考え方のまとめになります。
・余りは整数特有の性質で、これを用いることで整数問題に対して1つの論理的なアプローチがとれる(整数特有の性質4つのうち毎回これが使えるとは限らないが、この4つのいずれかもしくは組み合わせでは解ける)。
・整数問題において余りの性質を使いたい場合は $a=bq+r$ の形を作ったり、$mod$ を使うことが重要。先行きが分からなくてもこの変形をまずはすることで整数特有の性質という制約を課すことになるため、論理的に変なことはしていない。
・整数問題において上記の形を作る変形は整数問題以外ではやってはならないような強引な変形でも意味があることも多い。

ということになります。整数特有の4つの性質のどれが問題に相性が良いかなどは問題によるのでやってみないと分かりませんが、少なくとも4つの具体的方針や式立てがあることは分かっているのでこれらをマスターすることで整数問題は解ける様になります。

今回も本質的なところはしっかりと書いてみましたが、話したいことはもっと色々とあります。実際の授業を受ければより深い理解に繋がることは間違いないので、気になる方や整数を極めたい方は以下から大岡山学習会へお問い合わせください。独学の人はこれらの記事を参考に演習することでこれまでと違った学習になると思います。

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