数学全般

素因数分解から考える整数の謎~整数が作る宇宙は未解決の謎だらけ

素因数分解とは何か??素因数分解の一意性とは??

こんにちは。アインシュタイン太郎です。
今回は中学生の最初で習う内容であるにもかかわらず、大学受験やその後の数学研究一般の話にもつながる素因数分解をテーマに整数について考えてみたいと思います。

本記事は数学の知識なしに誰でも読める内容になっています。

ちなみに整数とは 「$\cdots,~ -3,~-2,~-1,~0,~1,~2,~3,\cdots$ 」という数のことなので、これ自体は一見何も難しいことはないように見えますが、この整数の分野の問題は数学研究では現在に至るまで長きにわたって謎を多く含んだ分野として有名です。

さて、ということで準備としてまず素因数分解というものおさらいしてみましょう。
これは非常に単純で整数を素数の掛け算の形で表すというだけです。

例えば $72=2^3\cdot 3^2$ のような具合ですね。
やり方は $72$ であればどんどん割れる数で割っていけば良いです。

例えばまず $72$ を $2$ で割ると$36$ になります。
次に、$36$ を $2$ で割ると$18$ になります。
次に、$18$ を $2$ で割ると$9$ になります。
次に、$9$ を $3$ で割ると$3$ になります。
次に、$3$ を $3$ で割ると$1$ になって終了です。

これで $72$ は $2$ で $3$ 回割れて、 $3$ で $2$ 回割れたので$72=2^3\cdot 3^2$と分かります。

これが素因数分解です。つまりある数を、それを構成する素数の積としてみることでその数の構成要素が分かるので問題が考えやすくなったりするということですね。

ちなみに素因数分解はどのような順番で割っても掛け算の順番以外は同じ結果になります。例えば先の$72$の例で割る順番を変えて、

まず $72$ を $3$ で割ると$24$ になります。
次に、$24$ を $2$ で割ると$12$ になります。
次に、$12$ を $3$ で割ると$4$ になります。
次に、$4$ を $2$ で割ると$2$ になります。
次に、$2$ を $2$ で割ると$1$ になって終了です。

やはり先ほど同様 $72$ は $2$ で $3$ 回割れて、 $3$ で $2$ 回割れたので$72=2^3\cdot 3^2$と同じになることが分かります。

これを素因数分解の一意性といいます。要は素因数分解というのは一通りしかできないですよ、ということですね。

まずここまでが素因数分解とはどのようなものかになります。
今回はこの素因数分解を使って、数学の歴史で大きな謎として君臨する整数の難しさを解説してみたいと思います

素因数分解と掛け算の相性を探る!

次に素因数分解のメリットの1つですが、これは掛け算との相性の良さです。
例えば $72$ と $70$ という2つの数を考えてみます。これらの掛け算を単純に計算すると $5040$ となります。単純に数を掛けただけではただの計算問題ですが、素因数分解をして掛け算をすることで見え方変わってきます。

例えば、 $72$ と $70$ をそれぞれ素因数分解すると、$72=2^3\cdot 3^2$ と $70=2\cdot 5\cdot 7$ となります。この形にして掛け算をすることでどうなるかを以下で見てみましょう。

$72\times 70=(2^3\cdot 3^2)\times(2\cdot 5\cdot 7)=2^4\cdot 3^2\cdot 5\cdot 7$

となります。これは先ほどの $5040$ というただの計算結果よりも構造・構成が見えやすくなっているのが分かるでしょうか。つまり $72$ と $70$ を構成する素数が掛け算の結果に全て引き継がれていることが確認できます。

より詳しく言えば $70$ を構成する素数に $5$ や $7$ がありますが、これらは $72$ との掛け算の計算結果の後にもしっかり引き継がれています。他の素数も同様です。

ここから分かることとして、素因数分解は整数の構造をより見えやすくすることができて、掛け算はその構造を引き継ぐということです。そのため素因数分解考える整数と掛け算の相性ですがこれは非常に良いということが分かります。

では次に整数と足し算の相性を探ってみましょう。

素因数分解と足し算の相性を探る!

今度は素因数分解と足し算の相性を探りたいということで、$72=2^3\cdot 3^2$ と $70=2\cdot 5\cdot 7$ を足した数の構成要素を見ていきます。

$72+ 70=(2^3\cdot 3^2)+(2\cdot 5\cdot 7)$

まずこの段階で素因数分解のままでは掛け算と違って計算がうまく処理できないことが分かります(できたとして共通の $2$ でくくるくらいしかできません)。

なので今回はやむを得ず、普通に $72$ と $70$ を足し算した $142$ の構成要素を見ることで、元の数の $72=2^3\cdot 3^2$ と $70=2\cdot 5\cdot 7$ との構成要素との関連を考えてみます。

$142$ を素因数分解すると、$142=2\cdot 71$ となります。
$71$ は素数であるため、これ以上素因数分解はできません。

どうでしょうか。これは掛け算とは全く違う結果になりましたね。

つまり元の数の $72=2^3\cdot 3^2$ と $70=2\cdot 5\cdot 7$ の構成要素が足し算の $142=2\cdot 71$ の構成要素とでは全く関係ないように感じてしまうわけです。気になる方は様々な2つの数を考えて足し算後の数を素因数分解して元の数の素因数分解の結果と色々照らし合わせてみてください。

ちなみにこの関連性の話は(関連性があるかないかも含め)、世界中の数学者が長い間研究していることで、この記事の本題と逸れて長くなるため、気になる方は今後大岡山学習会で何か企画をするかもしれないので是非そちらにご参加ください!

今回の記事は整数の難しさの本質として足し算が難しいというところが伝わっていればOKということです。

ということでここから分かることとして、足し算は素因数分解の構造を単純に引き継ぐわけではありません。そのため素因数分解考える整数と足し算の相性ですが、その相性は非常に悪い(悪いというか扱いにくい)ということが分かります。

素因数分解から考える整数の宇宙を体感しよう!

ということで中学の最初で習うような整数の分野はちょっと考察をするだけで良く分からないことだらけということが分かります(素因数分解の内容自体は小学生の時点でも理解できるにもかかわらず)。

そのため整数の分野は今に至るまで数学の歴史上、未解決の難問だらけです。そしてこれまでの話からその難問の多くは「足し算」が関係しています。

例えば未解決問題の1つにゴールドバッハの予想というものがあります。内容は以下です。

【4以上の全ての偶数は2つの素数の足し算で表せる】

という予想です。やはり足し算が関係していますね。

ちなみに予想というのは、証明はされていないけれどまだ間違いとなる例が出てきていないので成立するのではないか、ということで研究されていることですね(正しいなら証明をできればよく、間違いなら間違いの例を1個でも見つければよい、ということです)。

予想の検証として実際に4以上の偶数を並べていって、2つの素数の和で書いてみます。
$4=2+2$
$6=3+3$
$8=3+5$
$10=5+5$
$12=5+7$
$14=7+7$
$16=5+11$
$18=5+13$
$20=7+13$
$22=3+19$
$24=5+19$

どうでしょうか。とりあえず、 $24$ までは成り立つことが分かりますね。これらの中には複数の表し方が存在するものもあります。例えば、 $10$ は上記以外に $3+7$ でも表現可能です。

この予測は $24$ から先もコンピューターなどを使っても、2つの素数の和で表せないような4以上の偶数の具体例は発見されていません(もちろん発見されていれば予想は間違いということで話は終わりなので当たり前ですが)。

ただ上記の表し方を見て分かる通り、その表し方に関しては規則性がよく分からないものになっており、どのような構造で2つの素数の和で表現できるのかというところが難しいことが見てとれると思います。

このゴールドバッハの予想だけにとどまらず、数学における整数の分野では小学生でも理解できる内容だけれども未解決という問題が多数あります。

また解ける問題に関しても、整数という分野は上記の通り少し足し算が絡むだけで構造上非常に難しくなるため、東大や京大をはじめとする最難関大学の入試でも超頻出内容になっています。

つまり中学の最初で習うことにも関わらず、いずれ高3の受験期で頻繁に登場するということですね。もちろん中学内容の整数はその難しいところまでは触れないので安心ですが、裏にはそのような宇宙が広がっています。

人類の前に立ちはだかる数学の女王の存在

いかがだったでしょうか。今回は中学の最初で学習する素因数分解を例にとって、奥の深い整数の宇宙を覗いてみました。

そして最後の見出しの「女王の存在」とは何か、これで締めくくりましょう。

整数は数自体はとてもシンプルながら、そこから出てくる宇宙は謎にあふれて美しい構造を持っています。それに魅せられた天才数学者ガウスは「整数論」を「数学の女王」と言いました。

ガウスが何をもって整数を数学の女王と呼んだのかは分かりませんが、私はこの表現になんとなく共感をします。

整数の世界を体感したい人は、大人の方も含めてどなたでも、是非大岡山学習会の今後の整数の企画などにもご参加ください!
ちなみに高校1年生くらいの数学の内容を学習すると、かなり複雑な整数の問題を解けるのでとても楽しいですよ!

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