数学全般

$-1×(-1)=1$ が成立するのは何故??正確な理解のために必要な定義の拡張とは??

$-1×(-1)=1$を考える!そもそも掛け算とは何か?

こんにちは。アインシュタインタロウです。今回は多くの人が覚えてはいるけれど理由の説明は難しい $-1×(-1)=1$ の正しい理解を数学が苦手な方にも分かるように解説してみます。

ちなみに中学1年でこれを習うとき、例えば $5$ に $-1$ をかけると $-5$ となり「マイナスをかけると数直線の反対側に行くから」、同様に $-1$ に $-1$ を書ければマイナスをかけたことで数直線の反対側に行き $-1$ の反対にある $1$ になるというような感覚的な説明も多いですが、本記事では感覚的なところはなしにして数学として本質的なところを分かりやすく解説したいと思います。

ちなみに上記のような数直線等の感覚的説明は中学1年のときに教わる場合は、イメージが湧きやすいので決して悪いわけではないですが、厳密なのかどうかというと微妙で、やはり「数学という意味では」感覚的なものになっています。

一点注意は本記事は数学の本質的な部分を出来る限り損なわずに、数学に触れたことがない人も無理なく読めるよう書いた記事になりますので、超厳密に色々な定義を持ち出してやるわけではないので数学の研究をしている人などはその点をご了承ください。

さて、前置きが長くなりましたが、$-1×(-1)=1$ を理解するためにやはり重要なのはまずそもそも掛け算とは何かというところをしっかりと理解することが大事です。

掛け算とは足し算の省略記号になります。例えば $3\times 5$ というのは $3$ を $5$ 回足すということなので、
$3+3+3+3+3$
ということを省略したそんな記号になります。

まずこれがはじめの一歩です。ここまではおそらくそれほど難しい話は登場していないですね。

$-1×(-1)=1$はどう理解すれば良いのか?

さて次にですが、$(-1)\times3$ などはどうなるでしょう。
これは同様に考えれば $-1$ を $3$ 回足すということなので、
$(-1)\times3=(-1)+(-1)+(-1)=-1-1-1=-3$
ということになります(今回は負の数の足し算までは学習済みで使えるという前提にしておきます)。

さてそこで改めて、$-1×(-1)$ について日本語的に意味を追ってみましょう。
そうするとこれは、$-1$ を $-1$ 回足すということですね。

これはどうでしょうか。

まぁ意味が分からないですね(笑)。$-1$ 回足すということは言葉としても日常感覚としても成立していないですね。

ということで重要なことはそもそも $-1×(-1)$ は、普通に導いたり理解できたりするものではないということが大事です。この点をしっかりと押さえて次に進んでいきましょう。

現状は $-1×(-1)$ は普通の感覚では決められないし、謎である!ということが分かればOKです。

$-1×(-1)=1$は何故?また定義と定義の拡張とは何か?

さてここで $-1×(-1)$ は感覚的には分からないということは分かったけれど、じゃあどうするのかという話ですが、まぁ非常にざっくり言ってしまえば $-1×(-1)$ は感覚的にどうこうできるものではないので、勝手に決めてしまえばいいんですね。なので $-1×(-1)=100$ でも、$-1×(-1)=-2000$ でも、別に何でも良いという状況なんですね。

ただここで重要なことは、じゃあ $-1×(-1)=100$ にしましょう、と適当に決めてしまうとしましょう。そうすると、実はこれによって今までの計算上のルールを全て壊してしまい、新しい世界が広がらずに本当にただ記号的に $-1×(-1)=100$ というように決めただけになってしまいます。

どういうことかというと、次のように$(-1)\times3,~ (-1)\times2,~ (-1)\times1,~ (-1)\times0$ の計算結果を縦に並べて書いてみます。

$(-1)\times3=-3$
$(-1)\times2=-2$
$(-1)\times1=-1$
$(-1)\times0=0$

このようになるわけですが、これは $(-1)$ に掛ける数( $3,~ 2,~ 1,~ 0$ の部分)を $1$ 減らすごとに計算結果は $1$ずつ増えていきます( $-3,~ -2,~ -1,~ 0$ の部分)。これが今まで成立していた計算のルールです。そう考えると $-1×(-1)=100$ は変ですよね。
次のようになってしまうからです。

$(-1)\times3=-3$
$(-1)\times2=-2$
$(-1)\times1=-1$
$(-1)\times0=0$
$(-1)×(-1)=100$

一気にルールが崩れてしまいますね。
ということで結論になりますが、$-1×(-1)$ は何でも良いが、今までの計算規則がそれまで通り成り立つようにした方がこれまで同様に扱えるので都合が良い、ということです。

では今までの計算規則が成り立つようにするなら $-1×(-1)$ はいくつになるか、ということになります。このように考えると $-1×(-1)=1$ であることが分かります。ルールを一切崩すことがありません。次のようになるからです。

$(-1)\times3=-3$
$(-1)\times2=-2$
$(-1)\times1=-1$
$(-1)\times0=0$
$(-1)×(-1)=1$

このように「これまでの規則を使える世界を広くすること」を「定義の拡張」と呼んでいます。
今回で言うと、これまでの計算規則が「負の数と負の数の掛け算でも成立するように定義を広げてしまう」ということです。

少しややこしいことは、数学の本質的な話としては $(-1)×(-1)=1$ を定義しているのではなく、「負の数と負の数の掛け算でもこれまでの規則が成立するように計算規則を広げると、結果として $(-1)×(-1)=1$ となる」というように計算法則の定義自体を広げています。その結果 $(-1)×(-1)=1$ になる、というような具合です。

まぁここらへんは何をスタートとするかでも変わってくるので、解釈の仕方も色々ありますが、このように感覚的に決められないものを、ルールを先に決定することで決めていくというのはまさに「数学」という感じです。

$-1×(-1)=1$になる理由と定義の拡張のまとめ

ということでまとめになりますが、本来掛け算は「正の数と正の数」でしか定義していませんでした。このときに成り立つ計算規則を「正の数と正の数以外でもそのまま成立するように計算規則自体のルールを広げてしまう」ことで世界を広げることを数学では拡張と言います(この計算規則については今回厳密には触れず具体例で説明しています)。

なので、これによって$(-1)×(-1)=1$ は説明ができるわけですね。

重要なこととして $(-1)×(-1)=1$ は、決して日常感覚や言語感覚で「マイナスとマイナスをかけると、えーとどうなるかな・・・」みたいに考えて出てきたものではないということです。
数というもの自体もそうですし、それらの計算(演算)自体も、全ては人間が作り出した概念なんですね。

ちなみに私も数学を研究していた人間ですが、ここらへんの話はかなり厳密にやろうとするとそもそも $1$ や $-1$ とは何かとか、掛け算とは何か、などをより細かいところまで定義する必要があり、このような議論は大学での知識も必要になってくるのでそれを避けた説明にはなっています。

また、どの程度の計算規則をスタートにするかによっても説明の具合も変わりますので、今回はあくまで多くの人に数学の感覚を掴んでいただくための記事だと思ってください。

ただ計算規則がそのまま成立するように世界を広げるという本質的な部分自体は外していないので、その意味でかなりしっかりと「数学」をしているのでそこは間違いありません

中学高学年や高校生の皆さんなどはもう少し複雑な議論も出来たりして面白いので、興味があったり数学が好きな方は是非いつでも大岡山学習会にご連絡ください!

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