整数問題を解くために必要な小数にならないって何?
さて、この回では前の記事にあるように整数特有の性質を使った具体的な問題への応用の仕方について触れていきます。これら一連記事を読めばどんな整数問題にも対応できる考え方を獲得できます!今回が考え方の最終回になります。本当に最難関大学含め全ての整数問題に対応できる基本的な考え方になるので超重要です。
前の記事が前提になっているのでまだ読んでいない方はまず以下の記事をご覧ください。
参考) 整数問題の解き方は??どんな整数問題も解ける重要な考え方は4つ!
参考) 整数問題を解くための考え方その1~約数と倍数~
参考) 整数問題を解くための考え方その2~余り~
参考) 整数問題を解くための考え方その3~有限区間に有限個~
今回のテーマは整数特有の4つの性質のうちの1つの小数にならないについて扱います。今回の整数特有の性質の小数にならないというのは随分と当たり前のことな感じがしますよね。
整数とは
$0, \pm 1,\pm2, \pm 3,\cdots$
のように小数点がないような数であり、今回はこの性質を利用して問題を解こうということです。
当然ながらこれは性質以前にイメージ的なところでの「整数とはそもそも何か」に近い話なので、整数が小数にならないということは良いと思います。ただこの当たり前のようなことが問題には強烈に効いてきます。例えば、$x,y$ が整数で
$\displaystyle x=3+\frac{1}{y+2}$
という式があったとしましょう。
$x$ は整数なので、小数点は存在しないため、
$\displaystyle \frac{1}{y+2}$
の部分が整数になってくれなくては困ります。
このことから $y$ は整数なので $y+2=\pm 1$ の可能性しかなく、$y=-1,-3$ となり、これによって $x$ が決まり、最終的に、$(x,y)=(4,-1),(2,-3)$ と求まります。
これが小数にならないの性質になります。一見当たり前のようでも整数特有の性質なわけですから当然整数問題を解くためにこれを使うということはこれまでと同様で論理的に当然なことになります。
整数問題を解くために小数にならないを使う式変形や考え方をするには?
問題の中で小数にならないの性質を使おうとするときにすることは単純です。例えば、ある文字 $x$ が整数であるときにその条件を使いたいなら
$x=$~
の形に変形してしまえば、左辺は整数なので右辺が整数になるための縛りを考えていくだけです。
一点補足をすると、先の
$\displaystyle x=3+\frac{1}{y+2}$
の問題などで、最終的には$x$が整数になるためには $y$ に制約がでて、「 $y$ に範囲がある」という見方も出来なくはありません( $y$ が大きすぎると $x$ は整数にならない)。
そのため、この記事の「少数にならない」という性質を4つ目の性質とせずに、3つ目の性質の有限区間に有限個に入れ込んで指導している先生や講師もたくさんいます(たくさんいるどころかそれが主流です)。これは当然そのような見方も出来るので正しいわけですが、あえて4つ目の性質として分けたのは私が実際に授業をしていて、そのようにした方が理解しやすいシーンも多々あると感じたためです(実は私も昔は性質を3つとして教えていました)。
なのでもし塾や学校などのシーンで整数特有の性質3つという場合はそのような話だと思っていただくと良いと思います。
実際に整数問題を小数にならないの考え方で解いてみよう!
ここで以下の問題を考えてみましょう。
【問題】$x,y$ は0以上の整数として、$xy-2x-y-2=0$ を解け。
整数問題の一連記事ではこの1つの問題を整数特有の4つの性質を使い4つの別解を出しています。もちろん今回は4つの性質のうちの1つの小数にならないです。
では問題を解きましょう。これまでの話の通り、$x$ は整数なので $x=$ の形に持っていって制約を見ていきましょう。$x$ について解けばいいので
$(y-2)x=y+2$
として $y-2$ で両辺を割ればOKです。$y=2$ のときは割れないのでこれは $y\neq 2$ と場合分けして $y=2$ は後で確かめましょう。
そうすると $y\neq 2$ のとき
$\displaystyle x=\frac{y+2}{y-2}$
$\displaystyle ~=\frac{(y-2)+4}{y-2}$
$\displaystyle ~=1+\frac{4}{y-2}$
2行目からの変形は数学では一般的に分数式は分母の次数が高い方が好ましいことが多いため、そのように変形しています。今回も整数で確定している1が前にでて、小数になり得る部分が後ろにくるので好ましいですね。
この変形によって $x$ は整数なので、$y-2$ は4の約数になるしかないので、
$y-2=\pm 1,\pm 2,\pm 4$
となり、この中で $x,y$ が0以上の整数になるものは $y-2=1,2,4$
よって $y=3,4,6$
となります。
あとはこのときの対応する $x$ を求めれば、
最終的な答えの $(x,y)=(2,6),(3,4),(5,3)$ が求まります。
先ほど保留にした $y=2$ はもとの式の $xy-2x-y-2=0$ に代入して確かめると $-4=0$ となり、満たす $x$ がないのでこれは解にはなりません。
この解法は「分数式の扱い」の部分でやや数学の扱いの難易度はあるものの、約数倍数についで解きやすい解法でしょう。これは問題構造上、小数にならないという整数特有の性質との相性が良いということです。
これまでの記事と同様で重要なことは整数問題における変形はかなり強引でも意味があるという点です。つまり数学の式変形は整数問題に限らず解く問題や考え方によって正しいものであったり間違ったものになったりします。整数問題の変形は整数問題以外では意味のない変形も多いので注意しましょう。
整数問題を解くための小数にならないのまとめ
さて小数にならないの考え方のまとめになります。
・小数にならないは整数特有の性質で、これを用いることで整数問題に対して1つの論理的なアプローチがとれる(整数特有の性質4つのうち毎回これが使えるとは限らないが、この4つのいずれかもしくは組み合わせでは解ける)。
・整数問題において小数にならないの性質を使いたい場合は「整数である文字=」の形にして制約を考える。
ということになります。整数特有の4つの性質のどれが問題に相性が良いかなどは問題によるのでやってみないと分かりませんが、少なくとも4つの具体的方針や式立てがあることは分かっているのでこれらをマスターすることで整数問題は解ける様になります。
今回も本質的なところはしっかりと書いてみましたが、話したいことはもっと色々とあります。実際の授業を受ければより深い理解に繋がることは間違いないので、気になる方や整数を極めたい方は以下から大岡山学習会へお問い合わせください。独学の人はこれらの記事を参考に演習することでこれまでと違った学習になると思います。
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