整数問題を解くために必要な約数・倍数って何??
さて、この回では前の記事にあるように整数特有の性質を使った具体的な問題への応用の仕方について触れていきます。これら一連記事を読めばどんな整数問題にも対応できる考え方を獲得できます!
前の記事が前提になっているのでまだ読んでいない方はまずこちらの記事をご覧ください。
参考) 整数問題の解き方は??どんな整数問題も解ける重要な考え方は4つ!
今回のテーマは整数特有の4つの性質のうちの1つの約数倍数について扱います。約数倍数は聞き馴染みのある言葉ですね。
例えば $6$ の約数 $\pm 1,\pm 2,\pm 3,\pm 6$ はですし、
$7$ の倍数は $0,\pm 7,\pm 14,\pm 21,\cdots$ などです。
このように書くとこれが整数と関係ないように思えますが実は約数倍数は整数でしか定義していない整数特有の性質です。
例えば、5の約数は何かと聞かれて、$5=2.5\times 2$ だから $2.5$ は $5$ の約数というのがありだとすると何でも出来てしまいますね。
倍数も同様で、$6$ は $8\times 0.75$ だから $8$ は $6$ の倍数などといえるなら何でもありになってしまいます。
正確には倍数は上記のように実数で定義できなくもないですが、問題として意味を持たなくなってしまうことは分かると思います。以上のことから約数倍数という用語や概念は整数以外では意味を持たず、基本的には整数の分野で定義することが一般的な整数特有の性質になります。整数特有の性質なわけですから当然整数問題を解くためにこれを使うということは論理的に当然なことになります。
整数問題を解くために約数・倍数で使える式変形や考え方は?
約数倍数を再度紐解いてみます。例えば $6$ の約数は $6=2\times 3$ と積の形にすることでと分かりやすくなりますし、$7$ の倍数は $0,\pm 7,\pm 7\times 2,\pm 7\times 3,\cdots$ で、どちらも積の形に相性が良いことが分かります。そのため、約数倍数の性質を整数問題の中に使いたい場合は積の形を作り出すことに意味があります。
実際に整数問題を約数・倍数の考え方で解いてみよう!
ここで以下の問題を考えてみましょう。
【問題】$x,y$ は0以上の整数として、$xy-2x-y-2=0$ を解け。
これからこの1つの問題を整数特有の4つの性質を使い4つの別解を出してみます。もちろん今回は4つの性質のうちの1つの約数倍数です。
約数倍数の性質を使うには積の形を作りたかったので、まず左辺で強引に積の形を作ってみるために $xy-2x-y$ が出てくるように $(x-1)(y-2)$ という形を考えてみます(一番最後の項の $-2$ はとりあえず無視します)。
$(x-1)(y-2)$ を展開すると $xy-2x-y+2$ のように余分な $2$ が出るので、それを $-2$ で打ち消すと最初の式は
$(x-1)(y-2)-2-2=0$
のように変形できます。
あとは数字を右辺に移項すれば
$(x-1)(y-2)=4$
となります。
このようにすることで $x,y$ は整数なので $x-1,y-2$ も共に整数で、整数だからこそ約数倍数という整数特有の性質から $x-1,y-2$ は $4$ の約数となり、
$(x-1,y-2)=(1,4),(2,2),(4,1),(-1,-4),(-2,-2),(-4,-1)$
となり、問題文にあるように $x,y$ が0以上のものを求めれば、
$(x,y)=(2,6),(3,4),(5,3)$ が求まります。
ということで、この問題を約数倍数の性質を用いて解くことができました。シンプルに早く解けるので、この問題には約数倍数の性質は非常に相性が良いことが分かります。
ここで重要なことは整数問題における積の形を作るという変形はかなり強引でも意味があるという点です。最初に行った右辺の変形は厳密な因数分解ではないため、整数問題ではない実数の範囲の問題では意味不明な変形ですし、むしろやっても何の意味もなく良くないというレベルの式変形です。
つまり数学の式変形は整数問題に限らず解く問題や考え方によって正しいものであったり間違ったものになったりします。整数問題の変形は整数問題以外では意味のない変形も多いので注意しましょう。逆に整数問題において約数倍数の性質を使いたい場合は積の形を作ることが最も重要な変形になります。
整数問題を解くための約数・倍数の考え方のまとめ
さて約数倍数のまとめになります。
・約数倍数は整数特有の性質で、これを用いることで整数問題に対して1つの論理的なアプローチがとれる(整数特有の性質4つのうち毎回これが使えるとは限らないが、この4つのいずれかもしくは組み合わせでは解ける)。
・整数問題において約数倍数の性質を使いたい場合は積の形を作ることがまずは重要。
・整数問題における積の形を作る変形は整数問題以外ではやってはならないような強引な変形でも意味があることも多い。
ということになります。整数特有の4つの性質のどれが問題に相性が良いかなどは問題によるのでやってみないと分かりませんが、少なくとも4つの具体的方針や式立てがあることは分かっているのでこれらをマスターすることで整数問題は解ける様になります。
今回本質的なところはしっかりと書いてみましたが、話したいことはもっと色々とあります。実際の授業を受ければより深い理解に繋がることは間違いないので、気になる方や整数を極めたい方は以下から大岡山学習会へお問い合わせください。独学の人はこれらの記事を参考に演習することでこれまでと違った学習になると思います。
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